クレイグ シェパードは1972年のリーズピアノコンクールで銀賞を獲得して
以来30年以上にわたってクラシック音楽界で力強く活躍を続けている
ピアニストである。
彼の並外れた演奏の特徴は、湧き上がるように情熱的なエネルギーが、
卓越したテクニックと共に、知的な客観性に根ざしていることにある。
シェパードは2002年6月以来、日本に2度、台湾と韓国を一度づつ訪問し、
主要な演奏会場や大学での講演活動とコンサート活動を行った。
2004年9月には3回目の日本訪問の予定である。
彼はシアトルのミーニーシアターで2004年5月までの7回にわたって
ベートーベンのピアノソナタ全32曲のシリーズ演奏を行って大評判を博し、
評論家の絶賛を浴びた。
1999年4月には待望のベルリンフィルハーモニーホールでのデビュー
リサイタルを果たし、ここでも評論家の絶賛を浴びている。
1999年にはベナロヤホールにおけるシアトル交響楽団主催の講演とリサイタル
のシリーズに招かれている。
シアトル交響楽団の1996-97のシーズン開幕を飾るオペラハウスでの
コンサートではバイオリンのミドリ(五嶋みどり)と共に招かれたのに続いて、
1998年にも開幕コンサートに招かれている。
シェパードは近年シアトル室内楽音楽祭でも重要な役割を果たしている。
一般的な室内楽のレパートリーだけでなく、リチャード ダニエルプール作曲の
「夜の歌」の世界初演も行った。
彼はアメリカ ユタ州で行われる パークシティ国際音楽祭に毎回出演し、毎年夏に
ニューハンプシャーで行われるハイフェッツ国際音楽講習会では演奏だけでなく
学生の指導にあたっている。
クレイグ シェパードはフィラデルフィアに生まれ、ロイス ヘドナー と スーザン スター
にピアノの手ほどきを受けたあと、フィラデルフィアのカーティス音楽院でエリノア
ソコロフ に学んだ。その後ニューヨークのジュリアード音楽院に転学してサーシャ
ゴロドニツキ に師事して学士号と修士号を取得した。その間には度々夏のタングル
ウッド音楽祭に参加し、クロード フランク や リリアン カリア に師事している。
ロンドンに移ったあとでは、イローナ カボシュとクリフォード カーゾンに学び、
マルボロ音楽祭では高名な ルドルフ ゼルキンやパブロ カザルスにも学んだ。
1972年にニューヨークのメトロポリタン美術館でのデビューコンサートに大成功を
収めたあと、同年イギリスのリーズ国際ピアノコンクールで銀賞を受賞した。この
ときの金賞受賞者はマレイ ペライア、入賞者の中には内田光子(のちに1975年
銀賞受賞)もいた。
その後ロンドンに移り住み、録音活動やBBCのラジオとテレビ番組への出演を
通じて、同年代きっての卓越したピアニストの地位を確立した。
バッハの クラビーア 練習曲集(イタリア協奏曲、フランス組曲、ゴ−ルトベルク
変奏曲などをバッハ自身がまとめた難易度の高い大規模な曲集)の全曲(足鍵盤
付きオルガン曲を除く)とブラームスのピアノ独奏曲の全曲を、ロンドンを初めとする
各地で演奏した。
イギリス在住の20年間にはランカスター大学、ユーディーメニューイン
音楽院とギルドホール芸術大学で教鞭をとるかたわら、オックスフォード
とケンブリッジの両大学でマスタークラスも行った。
1987年、世界的な指揮者で優れたピアニストとしても知られるゲオルグ
ショルティはピアノデュオのパートナーにクレイグシェパードを指名し、イギリスの
オックスフォードとドイツのシュべチンゲン音楽祭でモーツァルトの 2台のピアノ
のためのソナタ(K.448)、ブラームスの ハイドン変奏曲(作品56b) と バルトーク
の 2台のピアノと打楽器のためのソナタ を共演した。
シェパードはこれまでにイギリスの全ての主要なオーケストラと共演し、
アメリカでもフィラデルフィア、ボストン、シカゴ、サンフランシスコ、
アトランタ、ダラス、シアトル、バッファロー、ロチェスターなどの
オーケストラと共演してきた。
共演した指揮者には、サー ゲオルク ショルティ、ジェームズ レバイン、
レナード スラトキン、マイケル ティルソン トーマス、サー アンドリュー
デイビス、ユーディー メニューイン卿、エーリッヒ ラインスドルフ、クルト
ザンデルリンク、ネーメ イェルビー、ハンス フォンク、アーロン コープランド、
ダヴィド ジンマン、ジェラード シュウォーツ、ペーター エルショーなどが
挙げられる。
シェパードのレパートリーは非常に広範囲に亘っており、40通りのソロ
リサイタルのプログラムと60曲の協奏曲を含んでいる。
ここ数年の演奏活動にはベートーベンの32のピアノソナタ全曲演奏
の他にショパン、ラフマニノフとドビュッシの「エチュード」全曲、バッハの
「ゴールトベルク変奏曲」、ベートーベンの「ディアベルリ変奏曲」といった
大曲や、シューマンの「ノベレッテ」全曲、ラベルの「鏡」と「夜のガスパール」
(近くCD化の予定)などがある。
共演した歌手には、ビクトリア デ ロスアンヘレス、ホセ カレーラス、
イリーナ アルヒポーバ、トランペット奏者にはウィントン マルサリス、
室内楽ではクリーブランド弦楽四重奏団、バルトーク弦楽四重奏団、
エマーソン弦楽四重奏団があり、これらの共演も、シェパードがなお
精力的に続けている重要な側面である。
シェパードはEMI (Classics for Pleasure), ポリグラム(フィリップス),
ソニー, チャンドス アンド シーラス のレーベルに録音している。
最近の4つのCDはドイツ、ベルリンのAT (アネッテ タンガーマン
at-label@gmx.de.) レーベルから発売された。これらは、ベルリン
フィルハーモニーホールでのゴールトベルク変奏曲のライブ演奏、
ディアベルリ変奏曲+スクリャービンの第5ソナタ、ショパンと
スクリャービンの前奏曲集、スカルラッティのソナタとラフマニノフ
のエチュード「音の絵」op.39である。
シェパードは多くのアメリカ国内、および国際ピアノコンクールの
審査員を務めてきた。彼はまた、幅広い分野にアカデミックな興味
を示していることでも知られ、特に数多くの外国語に堪能である。
シェパードは現在アメリカ、シアトルにあるワシントン州立大学の
音楽学部でピアノ科の教授を務めている。